著作権問題などが取り沙汰され、まだ課題も多い印象の生成AI。
しかし、そんな生成AIを授業に取り入れている学校があるといいます。
いったいどんなふうに活用しているのか、問題点はないのか気になりますよね。
そこで今回は、教育現場における生成AIの活用事例を、考えられる問題点とあわせてご紹介します。
生成AI、学校の授業でどんな活用事例がある?
実際、どんなふうに使われているんだろう?
では、生成AIを使った授業の例を5つご紹介します。
- 社会科の授業で地方の課題を調べるのに生成AIを活用
- 英作文の添削に生成AIを活用
- 生成AIを活用して生徒の質問に回答
- 劇の台本作成に生成AIを活用
- 生成AIに対する理解を深める授業を実施
活用事例1 社会科の授業で地方の課題を調べるのに活用
- つくば市立みどりの学園義務教育学校
- 8年生(中学2年生)
- 社会科地理
「生成AIパイロット校」に指定された茨城県の小中一貫校では、社会科の授業で生成AIが活用されていました。
授業の内容は、近畿地方の市町村についてその課題や解決策をニュース原稿形式にまとめるものです。
生徒たちは、地域の課題に数えられる少子高齢化や過疎化についてAIに質問。
生成AIは入力された質問に対する回答を生成するので、生徒たちは生成された回答を確認しながら原稿を作成していったようです。
活用事例2 英作文の添削に活用
- 長崎県立長崎北高校
- 高校2年生
- 英語
長崎県の高校では、生成AIを活用した英語の授業がおこなわれました。
生徒たちの英作文をなんとAIに添削させたそうです。
そんなこともできるんですね!
活用事例3 生成AIを活用して生徒の質問に回答
- 愛媛大学教育学部附属中学校
- 中学3年生
- 理科
生成AIを利用して生徒の質問に対応している学校もあります。
愛媛大学教育学部附属中学校でおこなわれた授業では、理科の実験の最後にタブレット端末を利用して生徒に感想や残った疑問を入力させています。
入力された感想や疑問に回答するのは、先生ではなくAI。
反省点を入力した生徒に対しては励ましのコメント、実験内容に関する疑問を入力した生徒に対してはその回答が表示されたようです。
活用事例4 劇の台本作成に活用
- 函館市立万年橋小学校
- 学級活動
函館市の小学校では、学芸会で披露する劇の台本を作成するのに生成AIを利用しています。
台本作成にかかる時間の短縮が目的だとか。
生徒たちはAIによって生成されたアイデアや文章をもとに、オリジナル要素を付け足して台本を完成させたようです。
活用事例5 生成AIに対する理解を深める授業を実施
- 函館市立万年橋小学校
- 小学6年生
生成AIに対する生徒の理解を深めるのを目的とした授業を、実際に生成AIを使って実施した例もあります。
不自然な点や間違った点のある生成物を提示したうえで、生成AIのメリット・デメリットについて生徒たちに考える機会を持たせたそうです。
生成AIを活用した授業には、
- 生成AIの生成した回答を利用して課題をまとめた中学2年生の授業
- 生徒たちの英作文をAIに添削させた高校2年生の授業
- 生徒たちの感想や質問に対する回答をAIに生成させた中学3年生の授業
- 劇の台本作成に生成AIを活用した小学生の授業
- 生成AIに対する理解を深めさせるために、実際の生成物を利用した小学6年生の授業
などの事例があります。
生成AIは、教育現場の業務効率化にも役立つ?
生成AIをうまく活用できれば、教育現場の業務効率化につながると考えられます。
先生の負担が減るのはいいですね!
どんな活用方法が考えられるんだろう?
大勢の生徒の質問に短時間で一度に回答
生徒の感想や疑問に対してAIに回答させた愛媛大学教育学部附属中学校の事例がありましたね。
生成AIの活用には、大勢の生徒に短時間で一度に対応できるというメリットがあります。
この活用方法が授業に導入されたのは、教師の忙しさが理由だったとか。
すべての生徒の質問に応じる時間の負担が、生成AIの活用で解決されたようです。
ただし、AIが生成した回答については授業が終わったあと先生が1つ1つ確認しているといいます。
授業の準備にかかる時間を短縮
生成AIは、試験問題の作成にも活用できるとか。
うまく取り入れれば、テストやプリントをより効率よく作成できるようになるでしょう。
生成されたアイデアをヒントに授業計画を立てることも可能です。
また、添削にAIを活用すれば、これまで添削に費やしていた時間を別の業務または休息にあてられるかもしれません。
文書作成の負担を軽減
教師には授業のほかにもさまざまな業務があります。
たとえば保護者への「お知らせ」や提出を控えた報告書など、文書の作成が必要なものもあるでしょう。
一から文章を考えるのは大変ですが、フォーマットの作成に生成AIを利用すればあとは修正を加えるだけ。
教師の負担は随分と減るはずです。
- 生徒の質問に対する回答
- 授業の準備
- 文書作成
これらの業務に生成AIをうまく活用できれば、教育現場の業務効率化につながると考えられます。
教育現場における生成AIの活用、どんな問題点が考えられる?
教育現場で生成AIを活用する場合の問題点には、以下のような例が挙げられるでしょう。
- 生成AIの回答は完ぺきではない
- 言葉を使う力を身につける機会を失う恐れがある
- 生成AIに依存するとコミュニケーション能力が育まれない
子どもたちに活用させるには、注意が必要なんですね。
生成AIの回答は完ぺきではない
あるサイト運営者がAIに生成させた文章をサイトにアップしたところ、内容に虚偽が含まれているまま拡散され問題になったことがありました。
AIが生成する文章は完ぺきではありません。
教育現場で生成AIを活用するには、AIは間違う場合もある点を生徒によく理解させる必要があります。
AIが生成した文章には、人の手による確認が不可欠です。
つまり、結局は人が見直し、出典を確認し、情報の正しさを確認しなければならないのです。
言葉を使う力を身につける機会を失う恐れがある
AIが文章を生成できるなら、作文やレポートを丸ごとAIに書かせてしまえばいいと考える生徒が出てくるかもしれません。
生成された文章を丸写し、コピペしていれば、その場は楽にしのげるでしょう。
しかしその結果、言葉を使う力を身につける機会を失ってしまう心配があります。
たとえ生成AIが普及しても、言葉を使う力は社会で生活するのに大切な能力です。
教師や保護者が文章の丸写しに気づいてあげる、そのうえでなぜ丸写しがよくないのか生徒に理解できるよう説明してあげる必要があります。
生成AIに依存するとコミュニケーション能力が育まれない
質問に対して回答が返ってくるのが面白くて、ついついAIと会話をしている感覚になる生徒がいるといいます。
生成AIは面白いツールですが、AIを友達のように錯覚して依存してしまうのは心配です。
AIは、あくまでツールの1つでしかないからです。
AIは人間ではなく、感情もありません。
どんな質問をしても怒り出したり悲しんだりしないAIが「会話」の相手では、コミュニケーション能力は養われません。
AIに依存しすぎて友達や家族との会話がおろそかになっていないか、注意する必要があります。
教育現場で生成AIを活用するのには、以下のような問題点が考えられます。
- 生成AIの回答は完ぺきではなく、人の手による確認が不可欠である
- 生成された文章の丸写しでは、言葉を使う力が身につかない
- AIに依存していてはコミュニケーション能力が身につかない
学校の授業に生成AIは必要?
問題点が多い生成AIをわざわざ授業に取り入れる必要はあるのかな?
学校で生成AIを活用するのには、子どもたちが生成AIを適切に使う力を育むという点で意義があると考える教育関係者らもいるようです。
生成AIを適切に使う力を育む
生成AIはたしかに便利ですが、必ずしも学校の授業に必要なのでしょうか。
調べ物はインターネットの検索機能で事足りるし、劇の台本を自分たちで一から作るのも豊かな経験の1つといえます。
業務効率化の点でメリットがあるのは理解できますが、子どものうちから積極的にAIに触れる必要があるのでしょうか?
いずれ普及するだろう生成AI
生成AIにはまださまざまな課題がありますが、やはり便利なツールです。
インターネットが普及したように、生成AIも今後ますます活用の場が増えると考えられています。
どこかで触れるなら、まず学校で
たとえ学校で取り入れなくても、生徒たちはいずれどこかで生成AIに触れるようになるでしょう。
いずれどこかで触れるツールなら、まず学校で教師に見守られながらAIに対する理解を深められれば安心ではないでしょうか。
「子どもたちが生成AIを適切に使えるように、その力を学校で養ってあげたい」。
そんな考えを持つ教育関係者らもいるようです。
- 学校の授業で生成AIを活用するのには、子どもたちの生成AIを適切に使う力を養う点で意義があるという考え方もあります。
まとめ
- 生成AIを活用した授業の事例
・社会科の授業で地方の課題を調べるのに生成AIを活用
・英作文の添削に生成AIを活用
・生成AIを活用して生徒の質問に回答
・劇の台本作成に生成AIを活用
・生成AIに対する理解を深める授業を実施 - 生成AIをうまく活用できれば、教育現場の業務効率化につながる
- 教育現場で生成AIを活用する際の問題点
・生成AIの回答は完ぺきではない
・生成された文章の丸写しでは、言葉を使う力が身につかない
・AIに依存していてはコミュニケーション能力が身につかない - 学校の授業で生成AIを活用するのには、子どもたちの生成AIを適切に使う力を養う点で意義があるという考え方もある
生成AIを適切に使う力を養うのも、今後学校の大切な役割になるかもしれませんね。
子どもたちには、便利な機能を正しく利用できる人間に育ってもらいたいと思います。
参考:「「生成AIパイロット校」が授業での活用を披露」(教育とICT Online)
文 江口悦弘氏
https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/06/21/00003/102600490/
(2023年10月26日更新)
参考:「【生成AI×学校】教育現場での使い方ガイド!活用事例やメリット、デメリット、注意点まで解説」(株式会社WEEL)
投稿 Hiromi Sai氏
https://weel.co.jp/media/education/start
(2024年1月16日更新)
参考:「生成AI 学校でどう教える?子どもへの影響は?」(NHK NEWS WEB)
荒川真帆氏 戸叶直宏氏 有水崇氏
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230602/k10014085331000.html
(2023年6月2日更新)