日本脳炎にかかる方は毎年、若干名ですが存在しています。
「脳炎」という響きはなんだかとても恐ろしい病名に聞こえますが、日本脳炎とはどんな病気なのでしょうか。日本脳炎の症状、かかりやすい年代、日本脳炎にかからないようにするため蚊に刺されない対策方法などをまとめました。
日本脳炎とは?
日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスによる流行性の脳の炎症性疾患です。
日本脳炎は日本という名前が付いていながらも、アジア各地の西太平洋諸国などでも感染が確認されており、感染は日本だけに留まりません。
日本脳炎と呼ばれるようになったきっかけは、この病気が初めて発見されたのが日本だったため、日本脳炎という名前が付けられたようです。
日本脳炎にかかる原因は何?
私たち人間が日本脳炎にかかる原因は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊の1種である「コダカアカイエカ」に刺されることで日本脳炎に感染します。
しかし、日本脳炎ウイルスが人の体内に侵入した場合でも実際に日本脳炎を発症するのは、250人~1000人に1人の割合といわれており、ほとんどの方は日本脳炎ウイルスが体内に入っても症状が出ないまま終わります。
日本脳炎の発症率はおよそ0.1%から1%です。
日本脳炎にかかるとどういう症状が起きる?
日本脳炎に感染し、発症するまでの潜伏期間は6日から16日といわれています。
潜伏期間を経て日本脳炎を発症すると以下のような症状が突然あらわれます。
- 頭痛
- 発熱や寒気
- 食欲不振
- 嘔気、嘔吐、腹痛、下痢
- めまい
この時点では日本脳炎だと分かる明確な症状はありませんね。
そして、日本脳炎だと分かるような症状が次第にあらわれます。
- まぶしがる(羞明)
- 意識がなくなる(意識障害)
- 表情がなくなる(仮面様顔貌)
- 筋肉が硬くなる(筋強直)
- 眼の動きが震える(眼振)
- 手足が動かない(運動麻痺)
- 意識していない動きがみられる(不随意運動)
- けいれん
- 呼吸が難しくなる(呼吸困難)
残念ながら現在時点で日本脳炎ウイルスを治す抗ウイルス薬はありません。
明確な治療法が無いため、日本脳炎ウイルスを発症しないようにワクチンで予防することが大切です。
致死率はどれくらい?後遺症などが残る可能性
日本脳炎を発症する可能性は、0.1%から1%とかなり低いのですが、もし日本脳炎を発症した場合の致死率は5%から40%にまで跳ね上がります。
生存できた場合にも、生存したおよそ半数の方に以下のような後遺症が残ることがあります。
- 歩行障害
- 手足の震え
- けいれん発作
- 麻痺
- 知能障害
- 情緒が不安定になる
予後が良くない病気であることが明確な後遺症が多いですね。
日本脳炎にかかりやすい年代や人はいる?
日本脳炎にかかりやすい年代として挙げられるのは、5歳以下の子どもや、60歳以上の高齢者となっています。
小さな子どもに日本脳炎の発症率が高く、早くからワクチンを打つことが推奨されているのはこのためです。
しかし、30代や40代の方が発症しているケースも過去にはあり、必ずしも若ければかからないというわけではありません。
2022年に確認された日本脳症の患者さんは全国で5名、2023年は9月時点で1名の発症が確認されています。
日本脳炎を発症する方はかなり稀ですが0ではありません。
日本脳炎にかからないためにできることはある?
日本脳炎に感染する原因はコダカアカイエカという蚊に刺されることによるウイルス感染です。
日本脳炎のワクチンは幼少期に2回打つことが多いようですが、幼少期であり自分がワクチンを打っているか覚えていないという方も多いのではないでしょうか。
そういった場合は、なるべく蚊に刺されないことを心がけたいですよね。
そもそも蚊に刺されると痒くてたまらないのでそれも嫌です。
意外にも、人を刺して血を吸うのはメスの蚊のみです。
メスの蚊は産卵するためにタンパク質を摂取する必要があり、人間の血を吸うことでタンパク質を補っています。
なので、蚊の産卵時期である4月から11月は特に注意が必要です。
蚊(コダカアカイエカ)はどこにいる?
日本脳炎ウイルスの感染源とされているコダカアカイエカは西日本を中心に東北・北海道など日本全国にまんべんなく分布しているため、遭遇しないことはほとんど不可能といえますが、蚊が多くいるところを避けることで遭遇率を低くすることができます。
蚊は水のあるところでしか産卵ができないため、生息する場所も水があるところにいることが多いです。
蚊がもっとも活発に活動する気温は25度~30度と言われており、気温が高い夏は建物の陰や木陰などにいることも多々あります。
- 田んぼ
- 湖沼
- 河川
などに近づく場合は特に気をつけたいですよね。
また、蚊は水さえあればどこでも産卵することが可能なので外に放置していたバケツに雨水が溜まった場合などでもそこに卵を産み付ける場合があります。家の周りにはなるべく水を置かないようにしましょう。
バケツに卵を産むなんて…適応能力が高くてビックリしますね。
蚊に刺されやすい人の特徴は?
蚊に刺されやすい人の特徴としてよく挙げられるのが以下のようなものです。
汗をたくさんかく
蚊の触角には温度を感知するセンサーがあります。
このセンサーで人間の体温を察知して寄ってくるため、ほかの人よりも体温が高い人に寄ってきやすい傾向があります。
また、蚊は温度だけではなく、汗の匂いなどの体臭にも寄りつく習性があり、汗をたくさんかいた運動後などは特に汗のケアが大切になります。
蚊が温度を感知するセンサーの感度は人間の約10倍と言われています。
飲酒している人
蚊には小顎髭(こあごひげ)と言われるセンサーがあり、このセンサーは二酸化炭素を嗅ぎ分ける能力があります。
この小顎髭のセンサーを利用して蚊は二酸化炭素を目印に人間の居場所を察知します。
呼吸をするだけでも二酸化炭素は排出されますが、アルコールを摂取するとアルコールを分解する際に二酸化炭素が大量に発生します。なので、飲酒している場合は普段よりも蚊が寄ってきやすくなります。
川辺でお酒を飲みながらバーベキューをしているシチュエーションでは蚊がたくさん寄ってきそうですね。
黒い服を着ている人
蚊の色の見え方ですが、蚊は色で物を見ているというよりも「色のコントラスト」で物を見ているようです。
蚊は周りの色から見て濃い「黒」や「赤」などを身につけている人に寄ってくるという海外の実験結果もあり、実際に白いTシャツを着ている人よりも黒いTシャツに集まってきたそうです。
また、白と黒の大柄なストライプのTシャツなどはコントラストがハッキリしており、黒単色のTシャツを着用している場合よりも刺されやすいという報告があり、1番蚊が集まりづらい服は「明るい単色のTシャツ」を着用するのが1番という結果になりました。
蚊に刺されないための対策方法
蚊がいたとしても、刺されなければ問題無さそうですがどういった対策方法がありますか?
長袖・長ズボンを着用する
夏場は暑いかもしれませんが、田んぼ・川・沼など水気がある場所に行く場合は刺される面積を減らすために長袖の上着を羽織る・長ズボンを着用することで蚊に刺されるリスクを下げることができます。
服装の色にも気をつける
長袖を着ていても、色の濃い服を着用している場合は蚊が寄ってくることがあるので、なるべく色の薄い明るい服を着用したほうがより確実に蚊を遠ざけることができます。
汗のケアをする
蚊は汗から発する臭いに寄ってくることが最近の研究で明らかになっています。足は特に蒸れることも多く臭いを発しやすいので、汗をかいた場合はこまめにケアすることが大切です。
虫除けスプレーをつける
虫除けスプレーはスプレータイプのものや、直接肌に塗るタイプのものがあると思いますが、蚊以外にも虫がたくさんいるような自然の中に行く場合は必須アイテムといえます。
物によっては6時間持続するタイプのものもありますが、平均的に虫除けスプレーが持続する時間は3時間程度のものが多く、こまめに塗り直すことでより効果を発揮します。
汗をかきやすいシチュエーションでは、汗によって虫除けスプレーが流れ落ちてしまうことも考えられるのでこちらも意識して塗布しましょう。
室内で対策したい場合は蚊取り線香を置く
エアコンを付けるくらい今は暑くもないけど、窓を開けて風通しを良くしたい!という場合や、キャンプなどの屋外で効果的なのは蚊取り線香です。
古くからずっと使われ続ける夏の風物詩ともいえる蚊取り線香。従来は煙が出ている物が多かったですが、現在は煙が出ないタイプも発売されています。
蚊取り線香はドラッグストアなどで購入することができるので、自分の好みに合ったタイプを購入すると良さそうです。
まとめ
- 日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスによる流行性の脳の炎症疾患
- 日本脳炎ウイルスを所持しているコダカアカイエカに刺されることで感染する場合がある
- 日本脳炎に感染しても発症する確率は0.1%~1%程度
- 日本脳炎を発症すると後遺症が残る割合も高く、日本脳炎にかからないことが大切
- 日本脳炎にかかりやすい年代は5歳以下の子ども、60歳以上の高齢者
- 蚊に刺されやすい人の特徴として、汗をたくさんかく人、飲酒している人、色の濃い服を着ている人などが挙げられる
- 蚊に刺されないためには、長袖や長ズボンを着用し、肌が露出する面積を少なくすることが大切
- ほかにも、濃い色の服を着ないなど、服装の色にも気をつける
- 汗をかいたらこまめに拭き取るなどのケアをする
- 虫除けスプレーをつける
- 蚊取り線香を置く
蚊に刺されると痒いので、なるべくなら刺されないようにしたいですよね。
しかし、蚊に刺されて「あ~痒かった!」だけで終わらない可能性もわずかながらあるということを念頭に置いて日々過ごしたいものです。