市川猿之助は本名きのしさん? 「喜熨斗」の読み方と歌舞伎にまつわる由来 

今も残念でならない歌舞伎役者・市川猿之助さんの事件。
ところで、事件について報じるニュース記事を読んだとき、つい気になるのが猿之助さんの本名です。

記事によれば、市川猿之助さんの本名は喜熨斗孝彦さんというのだとか。
「喜熨斗」が名字のようですが、あまりの珍しさにびっくり。
私は初めて目にしましたが、みなさんはどうでしたか?

今回は、市川猿之助さんの珍しい本名について読み方や由来を調査してみようと思います。

市川猿之助さん(2020年)
目次

市川猿之助さんの本名、読み方は?

市川猿之助さんの本名が喜熨斗孝彦さんだって初めて知りました。

読み方が知りたいです。

四代目市川猿之助さんの本名「喜熨斗孝彦」の読み方は、「きのし たかひこ」だそうです。

本名は喜熨斗(きのし)さん

「市川猿之助」は芸名

ご存知のとおり「市川猿之助」は代々受け継がれる歌舞伎役者の芸名です。
現在の猿之助さんは、四代目市川猿之助。
本名は別にあり、喜熨斗孝彦さんというそうです。

読み方は「きのし」

初めて目にした人も多いであろうこの「喜熨斗」という名字、読み方は「きのし」だそうです。
調べてみると、全国に約10人しかいない名字だとか。

つまり、市川猿之助さんの本名は「喜熨斗孝彦(きのし たかひこ)」さんと読みます。

まるで芸名?

  • 六代目中村勘九郎さんの本名は波野雅行さん
  • 六代目片岡愛之助さんの本名は片岡寛之さん

以上のように、代々かっこいい芸名を受け継いでいる歌舞伎役者の皆さんも、その本名は意外と耳に馴染みのある名前だったりします。

だからこそ、四代目市川猿之助さんの「喜熨斗孝彦」という本名にはびっくり。
本名なんですが、こっちも芸名のようですよね。
いったいどんな由来があるのか気になります。

まとめ
  • 四代目市川猿之助さんの本名「喜熨斗孝彦」は、「きのし たかひこ」と読みます。

市川猿之助さんの親類もみんな本名は喜熨斗(きのし)さん?

やっぱり、市川猿之助さんの親類もみんな本名きのしさんなんですよね?

じゃあ、いとこの香川照之さんも本名きのしさんですか?

市川猿之助さんの両親・祖父母・伯父らの本名は、喜熨斗(きのし)さんです。

一方いとこの香川照之さんは、喜熨斗(きのし)姓ではありません

両親・祖父母・伯父らは喜熨斗姓

市川猿之助さんのおもな親類の本名

喜熨斗宏之(四代目市川段四郎)
喜熨斗延子
祖父喜熨斗政則(三代目市川段四郎)
祖母喜熨斗弘子(高杉早苗※女優)
伯父喜熨斗政彦(二代目市川猿翁)

市川猿之助さんのご両親、祖父母はやはりみんな喜熨斗(きのし)さん。
喜熨斗(きのし)姓は、猿之助さんのひいひいおじいさん(初代市川猿之助さん)までさかのぼれるようです。

お父さんの兄・二代目市川猿翁さんは市川猿之助さんの伯父にあたり、やはり喜熨斗(きのし)姓です。

いとこの香川照之さんも本名きのし?

香川照之さんは喜熨斗姓ではない

香川照之さん(2020年)

歌舞伎役者・市川中車としても活躍する俳優の香川照之さんは、市川猿之助さんのいとこにあたります。
市川猿之助さんの親類ですから、香川照之さんの本名も喜熨斗(きのし)さんなんでしょうか?

実は、香川照之さんの本名は喜熨斗(きのし)姓ではありません
これは、ご両親の離婚後、香川さんがお母さんに引き取られたからです。

両親が離婚、母親の姓に

香川照之さんの父親は、二代目市川猿翁さん。
市川猿之助さんの父親のお兄さんです。
しかし、幼いころに両親は離婚。
香川さんは母親の浜木綿子(はま ゆうこ)さんに引き取られました

そのため、香川さんの本名は喜熨斗(きのし)ではないのです。

ちなみに、本名は「香川照之」のようですよ。

出典:「中車・團子プロフィール」(中車と團子の会)
http://chusha-danko.com/profile
(2023年11月19日に確認)

お母さんは女優さんで、浜木綿子という名前は芸名。
「香川」はお母さんの本名とのこと。
俳優業では、本名を使って活動されていたんですね。

まとめ
  • 市川猿之助さんの両親・祖父母・伯父ら親類も、本名は喜熨斗(きのし)姓です。
  • いとこの香川照之さんは、両親の離婚後母親に引き取られたため喜熨斗(きのし)姓ではありません。

喜熨斗(きのし)という名字の由来は?

それにしても珍しい名字ですよね。
どんな由来があるんだろう?

市川猿之助さんの本名「喜熨斗(きのし)」には、

  • 四代目坂東三津五郎の屋号
  • 熨斗菱の家紋

が由来という説があるようです。

坂東三津五郎さんからもらった?

喜熨斗(きのし)という珍しい名字の由来について調べたところ、過去に先代市川猿之助(二代目市川猿翁)さんが名字の由来に触れたことがあるという話を見かけました。
その話が本当なら、「喜熨斗(きのし)」は、三津五郎さんからもらった名字だといいます。

三津五郎さんとは

先代市川猿之助のいう「三津五郎さん」は、おそらく坂東三津五郎さんのこと。
「坂東三津五郎」もまた、歌舞伎界で代々受け継がれている芸名です。

坂東三津五郎さんとの関係

坂東三津五郎さんは、喜熨斗(きのし)一族とどんな関係にあった人なのでしょう。

四代目市川猿之助さんのひいひいおじいさんにあたる初代市川猿之助。
『女性自身』の記事によれば、初代市川猿之助の父親・坂東三太郎は、四代目坂東三津五郎の弟子だったそうです。

出典:「女性自身」(2023年7月23日更新)
https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/2223736/2/
(2023年11月20に確認)

初代市川猿之助の父親と坂東三津五郎の間には、師匠と弟子の関係があったんですね。
(※六代目坂東三津五郎の門弟だったという説もあるようです)

「喜熨斗(きのし)」の由来

「喜熨斗(きのし)」は、

  • 屋号「喜の字屋」
  • 家紋「熨斗菱」

この2つが由来という説があるようです。
特に「喜の字屋」の屋号は、坂東三津五郎さんに縁があることがわかっています。

屋号「喜の字屋」

初代市川猿之助の父親の師匠・四代目坂東三津五郎は、複数の屋号を持っていました。
その1つが「喜の字屋(きのじや)」だったそうです。

師匠の屋号「喜の字屋」から「喜」の一字をもらったとも、「きのじ」から「きのし」という読みをもらったとも考えられますね。

家紋「熨斗菱」

坂東玉三郎さんらも使う「熨斗菱(のしびし)」という家紋があります。
真偽は確かめられませんでしたが、

  • 初代市川猿之助の父親・坂東三太郎が熨斗菱を使っていた
  • 三代目坂東三津五郎が熨斗菱の模様をかんざしに使っていた

といった説があるようです。

由来には諸説あり

もちろん由来については諸説あり、「喜の字屋」とともに祝いの品に添える「熨斗」が由来ともいわれています。
ちょっと縁起がよさそうですもんね。

出典:「日本姓氏語源辞典」(著 宮本洋一氏)
https://name-power.net/about.php
(2023年11月21日に確認)

まとめ
  • 市川猿之助さんの本名「喜熨斗(きのし)」は、四代目(または六代目)坂東三津五郎からもらい受けた名字という説があるようです。
  • 市川猿之助さんの本名「喜熨斗(きのし)」は、屋号「喜の字屋」と家紋「熨斗菱」が由来という説があるようです。

「喜熨斗(きのし)」は市川猿之助さん一族以外の役者にも使われている?

師匠からもらった特別な名字かもしれないんですね。

ほかに同じ名字を使っている役者さんはいるのかな?

秩父に伝わった歌舞伎を受け継いでいる坂東彦五郎という役者さんが、喜熨斗屋(きのしや)の屋号を持っているそうです。

坂東彦五郎の屋号「喜熨斗屋(きのしや)」

坂東彦五郎とは

数百年も前に、秩父に歌舞伎を広めたのが初代坂東彦五郎です。
「坂東彦五郎」もまた、代々受け継がれる芸名となりました。
少なくとも十二代目まで続いたことがわかっています。

坂東三津五郎さんとの関係

その初代坂東彦五郎が使っていた屋号が「喜熨斗屋(きのしや)」だとか。
驚くことに、漢字も読み方も市川猿之助さんの本名「喜熨斗(きのし)」と同じです。

「坂東彦五郎」の芸名とともに続く「喜熨斗屋」の屋号は、三世三津五郎からもらい受けたという説が残っているようです。

三世三津五郎とは、三代目坂東三津五郎のこと。
秩父に歌舞伎を広めた初代坂東彦五郎は、三代目坂東三津五郎のもとで修行をしていたといわれるそうです。
なんと、こちらの喜熨斗屋さんも坂東三津五郎さんと関係があるんですね。

由来は「喜の字屋」?

しかし、喜熨斗(きのし)の由来といわれる「喜の字屋」の屋号は、四代目坂東三津五郎が使っていたもの。
三代目が使っていたという話は見当たりません。

そもそも「喜の字屋」は、森田座(のちの守田座)の「森田勘彌」の屋号です。
四代目坂東三津五郎は森田勘彌の名前も襲名しているため、「喜の字屋」の屋号も使っていたのだとか。

「坂東三津五郎」と「森田勘彌」、2つの家は古くから関係があったといいます。
三代目坂東三津五郎は、「森田勘次郎」の名前を名乗ったこともあるとか。
「喜の字屋」の屋号に縁があったとも考えられますが…。

「坂東彦五郎」が受け継ぐ「喜熨斗屋」の屋号も、「喜の字屋」が由来なのでしょうか?

まとめ
  • 秩父に伝わった歌舞伎を受け継いでいる「坂東彦五郎」という役者が、「喜熨斗屋(きのしや)」の屋号を使っています。
  • 初代坂東彦五郎は、三代目坂東三津五郎の門弟だったそうです。

まとめ

  • 四代目市川猿之助さんの本名「喜熨斗孝彦」の読み方は「きのし たかひこ」
  • 四代目市川猿之助さんの両親・祖父母・伯父ら親類も、本名は喜熨斗(きのし)姓
  • 香川照之さんの父親は二代目市川猿翁だが、両親の離婚後母親に引き取られたため喜熨斗(きのし)姓ではない
  • 市川猿之助さんの本名「喜熨斗(きのし)」は、四代目坂東三津五郎からもらい受けた名字という説がある
  • 四代目坂東三津五郎の使っていた屋号の1つは「喜の字屋」
  • 市川猿之助さんの本名「喜熨斗(きのし)」には、屋号「喜の字屋」と家紋「熨斗菱」が由来という説がある
  • 秩父に伝わった歌舞伎を受け継ぐ「坂東彦五郎」という役者の屋号が「喜熨斗屋(きのしや)」
  • 初代坂東彦五郎は、三代目坂東三津五郎の門弟

歴史ある歌舞伎役者の家の名字には、やはり歴史を感じるエピソードがあるんですね。
「喜ぶ」に「熨斗」、一家の明るい未来への願いを感じる素敵な名字だと思います。

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