2023年5月28日におこなわれた第90回日本ダービー。レース中にスキルヴィングという1頭の競走馬が17着でゴールしたのち、息を引き取りました。騎手を落とさないようにゴールまで駆け抜けたスキルヴィングの姿、スキルヴィングが転倒してからずっと頭をなで続けていたルメール騎手。当時の動画を何回見ても悲しくて涙が出てくる出来事でしたよね。
この記事ではスキルヴィングの死因や競争成績、当時スキルヴィングが倒れた様子を撮影した動画を掲載しています。競走馬そのものの平均寿命・競走馬は引退後はどうなるのかなどもまとめました。
この記事でわかること
- スキルヴィングの年齢・死因・競走成績など
- 競走馬の平均寿命
- 競走馬の引退後について
スキルヴィングの基本的な情報
スキルヴィングは父をキタサンブラックに持つサラブレッド(競走用に品種改良された軽種馬)です。2020年3月25日に出生した牡馬(ぼば)であり、競走成績は5戦3勝とかなりの好成績を残していました。2023年に開催された青葉賞では素晴らしい走りで追い上げた結果、1着でゴールし、第90回日本ダービーでは2番人気を誇る競走馬となりました。
青葉賞の様子
後半の追い上げが素晴らしいですね。この時スキルヴィングに乗馬していたのもルメール騎手です!
スキルヴィングの死因は?
スキルヴィングの死因は急性心不全です。同じく心不全が原因で亡くなった馬も数多く存在していますが、レース中に急性心不全を起こすケースはとても稀なケースのようです。こういったことが起きた時のために馬用のAEDは用意できないのか?という意見もあるようですが、現段階で馬用のAEDを開発することは難しいとの見解でした。
スキルヴィングが急性心不全を発症したのは3歳。あまりにも急すぎました。
心不全とは?
心機能が低下すること。心機能が低下すると心臓が正常に機能しなくなる。
収縮が弱まる・または収縮しなくなることにより、全身に血液を流すことができなった結果、血液の循環障害が起こる。
心不全は人間がなることもあるので、身近といえば身近な病気ですよね。
今回、スキルヴィングがなぜ急性心不全を発症したのかという根本的な原因を特定するのは難しいようですが、急性心不全で苦しかった中、ルメール騎手を乗せてゴールまでたどり着いた姿はレースを見ていた観客の心を震わせたのではないでしょうか。
原因が不明な以上、対処のしようがありません。今後もこのような事が起きないことを祈るのみです。
日本ダービー・ゴール後のスキルヴィングの倒れた時の動画
拙い足取りでゴールした後、ルメール騎手を背中から下ろしてからスキルヴィングは崩れ落ちるように倒れてしまいました。即座にルメール騎手がスキルヴィングが装着しているハミ・鞍などの馬具を取り除き、楽にしてあげています。その後もずっとスキルヴィングの顔をなで続ける姿は、一緒にレースを駆け抜けた戦友を思う気持ちからかもしれません。
駆け寄るルメール騎手(倒れた時の画像)
この様子を見ていた方々からはスキルヴィングのご冥福をお祈りするツイートや、ルメール騎手を下ろすまで耐えていたように見えるというツイートが多数見受けられました。
そして、スキルヴィングの訃報について、スキルヴィングの騎手であったクリストフ・ルメール騎手はInstagramにて以下のようなコメントを残しています。
見ている人以上に悲しい思いをしているのは間違いなくクリストフ・ルメール騎手ですよね。
競走馬・馬の平均寿命は?
ここからは競走馬を含めた野生の馬や、一般的に飼育されている馬の平均寿命についてまとめていきます。
馬の年齢を4倍することでおおよそ人間の年齢に換算されます。
馬の平均寿命
まず、飼育されていて競走馬ではない普通の馬の寿命は、20年~30年です。
人間の年齢に換算すると80歳~120歳ということになりますね。
人間の年齢で考えると平均寿命が20年~30年というのは生き物としてもかなり長生きだと思います。そして、その馬の長生きな平均寿命を大幅に超え、馬の世界最長寿記録を持つイギリスのオールドビリーという馬はなんと、62年間も生きました。競走馬などではなく、一般の方が飼育されていた馬のようですが、均寿命のおよそ2倍も生きたなんて本当に凄いですよね。62年に次いで長生きした馬は56歳。シュガーパフという馬ですがこちらも負けず劣らずご長寿です。
オールドビリーが生きた年齢62年×4で人間の年齢に換算すると248歳。もはや現実味のない年齢に感じてしまいます。
次に、野生の馬の平均寿命ですが、野生の馬の平均寿命はおよそ18年から20年となっているようです。野生でのびのびと暮らしているほうが平均寿命も伸びそうですが、野生には天敵も多く、足を1本でも怪我してしまうと馬は生きることができません。そういったことが原因で平均寿命も短いようです。
なぜ足を1本失うだけで亡くなってしまうのか?
馬の足は、1本におよそ100キロから150キロの負荷がかかっています。足を1本失うと、残っている3本の足で失ってしまった足にかかっていた負荷も補わなければいけません。その負担が他の3本の足に血行障害をもたらし、骨折していない足にまで障害をもたらします。最悪の場合、健康な足まで腐ってしまうのです。
ちなみに、日本にいた野生の馬は絶滅したといわれています。
競走馬の平均寿命
競走馬の平均寿命はおよそ20年から25年です。競走馬でもなく野生でもない一般的に飼育されている馬に比べると短い平均寿命ではありますが、野生の馬と比べると長生きであることが分かりました。馬に詳しくない!という方でも名前だけは知っているのでは?というほど有名な競走馬・ディープインパクトは17歳(人間の年齢でいうと60代後半)と、平均より短い年齢で生涯の幕を閉じていますが、サクラエイコウオーという競走馬は32年間生きたという記録もあるので、個体差や環境によっても寿命が大きく左右されるのはどの馬でも同じようです。
しかし、怪我をする・体に負荷がかかるというのは他の馬に比べて段違いにリスクが高いのでそういった面ではやはり競走馬の寿命は短いです。
競走馬としての寿命
ところで、競走馬の現役年齢はいったい何歳くらいなんだろう?
現在の競走馬の現役年齢はおよそ3歳~4歳といわれています。一昔前は6歳くらいまで現役の競走馬として活躍している馬も多かったようですが、引退した後に種牡馬(しゅぼば)になることを考えて早めに引退する競走馬も多く、現役年齢がだんだん早まっています。
もちろん、4歳以降も現役でいる競走馬もいますが、それにしても現役でいられる期間は短いですね。
競走馬は生産牧場と呼ばれる場所で生まれ、1歳になると今度は育成牧場というところに移ります。育成牧場では、競走馬として必要なトレーニングを行います。早い馬は2歳でデビューを迎えますが、3歳にデビューする競走馬もいます。なので、デビューして2、3年で引退してしまう馬も少なくはありません。
競走馬を引退した後、馬はどこにいく?
競走馬が引退した後は、どこにいくんだろう?
引退した競走馬は、牝馬(ひんば・メス)・牡馬(ぼば・オス)双方優秀な子孫を残すために種牡馬や繁殖牝馬になります。しかし全ての牡馬が種牡馬になることは出来ず、G1レース(競馬の最高格付けのレース)に勝利した牡馬しか種牡馬になることができません。G1レースに勝利したことがあったとしても血統が良くないと種牡馬になることはできないので、非常に狭き門といえます。
牝馬が繁殖牝馬になることにレース実績はあまり関係無いようです。
種牡馬、繁殖牝馬になれなかった競走馬はどうなるのでしょうか?競走馬の受け入れ先があれば、乗馬として活躍する競走馬もいるようです。乗馬とレースでは勝手が全く違うので、乗馬としての訓練を受けることになりますが、このように受け入れ先がある馬は幸せかもしれません。多くの競走馬は引退すると殺処分されることが多いのです。
なんと引退した9割の競走馬は殺処分されています。
日本では毎年5000頭近いサラブレッドが生まれていますが、全てのサラブレッドがレースで活躍できるわけではありません。引退したすべての競走馬に引取先が見つかれば良いですが、そうもいかないのが現実。殺処分されている競走馬は出生頭数を上回る7000頭にも及んでいます。
馬は足を1本怪我しただけでも致命傷になってしまうし、引き取るなら広い牧場も必要なのでハードルが高いですよね。
しかし、この現状を変えようとしている団体もあります。認定NPO法人引退馬協会は、引退した馬を支援する法人です。こちらでは引退した競走馬に直接触れたり、ご飯をあげたり、乗馬することもできるようです。
動物とふれあうことで人間も癒やされるので、こういった法人はありがたい存在です。
こちらでは馬を引き取ることも可能のようです。大好きな馬を最期まで看取りたいという方は、よくよく考えてから引き取りましょう。
認定NPO法人引退馬協会
この法人以外にも引退した競走馬を受け入れている団体は沢山あります。より多くの競走馬が幸せな余生を送ることができると良いですよね。
まとめ
- スキルヴィングの死因は急性心不全
- 明確な急性心不全の原因は特定できず
- 競走馬の平均寿命は20年から25年
- 引退した競走馬は、種牡馬になるか、繁殖牝馬になる
- 引取先が見つからなかった競走馬は殺処分されている
- 殺処分数は毎年7000頭を超える
- しかし、引退した競走馬を救うために動いている団体もある
いかがでしたか?競馬は見ていて楽しく、お金を賭けるとさらに熱くなります。競馬場で初めて生の馬を見た!という方もいるのではないでしょうか?しかし、楽しさの裏にはこのような現実もあります。そのことを知っているだけで少し競走馬を見る目も変わるのではないでしょうか。
そして今回、日本ダービーのレース中に急性心不全で亡くなってしまったスキルヴィングのご冥福をお祈りします。